10年後の引退を目指す男。

無闇矢鱈な雑感。

プレゼント。

小学4年生の時。クラスの人気者Nくんの、お誕生日会に招待されました。成績優秀、スポーツ万能、クラスの女子が群がるような少年。そんな彼の主催イベントなので、15,6人ほどの参加者がいたと思います。印象的な出来事があったので、この会のことはよく覚えています。

途中、参加者からのプレゼント進呈式みたいな時間がありました。席が前の方から順番に渡していくのですが、事前に金額の取り決めなどは無く、中流家庭以上の子などはプラモデルとかを進呈するのです。駄菓子の詰め合わせ(¥100分)しか持って行ってなかった自分はドキドキです。「俺より安いの出てくれ!」と祈っていました。ちなみに自分の席は最後付近でした。

そんなこんなで半分ぐらいが過ぎたころでしょうか、クラスではおとなしめの女子、Sちゃんの順番が来た時に事件が起きました。彼女は照れながら「私、いっぱい考えたけど、Nくんの欲しいものが何か分からなかったから、これ...」と、ポケットから裸の五百円札を出したのです。その場の全員「 . . . 」です。場が凍るとは、ああいうこと言うのでしょう。でも、自分は「 . . . 」と周りに合わせつつ「すごい..俺ならアレが一番うれしい」心の中でつぶやいていました。そんな馬鹿とは違い、Nくんは小学4年なのに大人の対応で「Sちゃん、これ(現なま)は受け取れないよ」と言ってました。Sちゃんも「いったん出したものを引っ込められないわ」と抵抗。行き場を無くした五百円札は、会の終わりまでSちゃんの座るテーブルの隅に置かれていました。

自分は、一体どういう決着がつくのか興味津々だったのですが、会がお開きになって皆が席を立った時、Nくんのお母さんが「これは気持ちだけもらっておくから」と言ってSちゃんのポケットに、例の五百円札をねじ込んでいました。Sちゃんは無念そうな顔をしていましたが、その時の自分はというと「Sちゃんラッキー、ケーキとお菓子食べてジュース飲んで、五百円もらったようなもんじゃないか」と、下品なことを考えていました。貧すれば鈍するを体現する、はずかしい少年でした。

五百円に気を取られて忘れていましたが「Sちゃんラッキー」ではなくて、ラッキーだったのは自分なのだと思います。五百円札事件のインパクトが強すぎて、自分持参の駄菓子の詰め合わせ(¥100)が完全に霞んでしまったのですから。あのまま何事もなくプレゼント進呈式が進んでいれば、次の日から「駄菓子百円くん」みたいな不名誉なアダ名を頂いていたかもしれません。恐ろしや、です。ありがとうSちゃんです。

この先、人生のどこかで彼女に会うことがあれば、当時のお礼を言わなければと思ったり、思わなかったり。

では、また。